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Vol.13 「日本臨床スポーツ医学会を聴講して」

10月30日・31日に、日本臨床スポーツ医学会を聴講してきました。(2004.12)

今回の学会を聴講してまず感じたことは、様々な機関が分野に捉われず専門を活かした取り組みをスポーツに対して行っているということです。
それは、昨今の日本人アスリートが世界を舞台に活躍していることや、長寿である日本人の健康にも深く関係していると感じました。

 今回は、11月に行われるヤマハ発動機のラグビーチームに行うアカデミーの参考とする為、ラグビー及びマウスガード・マウスピース(以下MG・MP)、またスポーツに積極的にかかわろうとしている医療機関・歯科の発表を中心に聴講してきました。
ただ、今回の学会だけをみてとると歯科及び口腔内の外傷や治療に関したものはとりわけ少なく、現在の日本の歯科がいかに「口腔内のみ」をみているか、また、スポーツに対しての関心度の低さが浮き彫りとなりました。
ラグビーに関する発表を例に挙げてみると、ラグビーの試合・練習中における外傷の実に7割が下肢であり、次に上肢(2割)・頭部(1割)となります。
頭部に関しては、脳震盪など一般的に重篤に扱われる外傷にのみ絞られていて、口腔内に関しては、MG・MPの使用有無程度にとどめられていました。

 近年、MG・MPを必要とするスポーツのほとんどがコンタクトスポーツ、いわゆる「接触型スポーツ」であり、接触による外傷で死に至ることも決して珍しいことではありません。
その為、ボクシングやプライド・K−1といった格闘技や女子ラクロスではMG・MPの使用を義務づけることで歯牙の破折や顎骨折、また接触の衝撃を吸収して脳震盪を防ぐといった予防を行っています。
しかし日本ラグビー協会では、一部の団体を除いてMGの使用を薦めてはいますが義務化はなされていません。
頭頚部顔面外傷の予防・安全対策を喚起しているものの、すべては監督、選手の判断に任せているのが現状です。また、その装着率は欧米に比べるとはるかに低くなっています。

 全国高等学校ラグビーフットボール大会医務委員会の外山幸正氏らの発表、「高校ラグビー選手の外傷に関するアンケート」では1234名中、95%が自前のヘッドギヤを、78%がMGを使用していると答えています。
しかし、この結果だけをみると残りの数%に至っては、MGはおろかヘッドギヤすら着用していないということになります。
ちなみにアンケート調査に答えた1234名の高校生ラガーマンの約半数が、高校3年間に脳震盪を経験していると答えています。

 ラグビーの頭部外傷でもっとも多いのが下顎骨折であり、その治療には数ヵ月を必要とします。
骨折した下顎は約6週間固定される為、その間食事は流動食となり、結果、体重は減量(個人差はありますが5〜6kg)し、筋力も落ちる為、復帰後のパフォーマンスの著しい低下を余儀なくされることとなります。
それがアスリートにとって、どれほど重大な事実であるかは想像に難くありません。

 スポーツ歯科という観点から、MG・MP、テンプレートやスポーツテンプレートの普及、それらによる予防、外傷の軽減・保護、また正しいかみ合わせによって重心動揺の正中への収束=姿勢が良くなることで効率の良い筋力の発し方など、研究すべきことはたくさんあります。
下顎骨折の大きな原因となる埋伏の下顎智歯の抜歯や、正しいかみ合わせの指導は今現在現役のアスリートはもちろん、将来オリンピックやプロを目指す大きな可能性をもった子ども達にとっても必要不可欠だと思います。

 今回の学会を聴講して、歯科もスポーツともっと関わるべきだと感じました。
一部の歯科だけではなく、その地域のいろんな歯科でこういった取り組みがなされれば、 地域スポーツの向上や健康増進に繋がると思います。
こういった観点から、これからも「スポーツ歯学」を通じて、たくさんの人々のお役に立てればいいなと思いました。

 コンタクトスポーツ・・・接触型スポーツ
ボクシング・テコンドー・ムエタイ・キックボクシング・相撲・ラグビー・アメリカン・フットボール・サッカー・バスケットボール・ハンドボール・ラクロス・アイスホッケー・水球など
 コンタクトプレイがあまりない競技(モトクロス・オートバイ・F−1・弓道やアーチェリーなど)でもMGを使用している選手がいます。
これらは、瞬発的動作による噛み締めが筋力に関係していることに着目し、その筋力を最大限に活用する為(個人差がある)、また、歯牙の保護の為に使用していると考えられます。 
(文責: 医療秘書・体育学部準学士 佐木 なつみ )
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